「暮らし」を提供する

STORY 2 藤野 龍也 広松木工 大川本店

interview: 株式会社広松木工 本店 藤野龍也

聞き手: 福岡移住計画 須賀 大介



今回、夜明の宿プロジェクトは、様々なパートナーの思いが集まって完成した。内装、家具、仕組み、これらを1社で考えるのではなく、協力しあう形で実現したのだ。
今回お話を伺うのは、福岡県大川に本店を持ち、東京圏にも多くのファンを持つ、「広松木工」さんの藤野店長(当時)。夜明の宿の家具の、その多くを「広松木工」に提供していただいているのだ。広松木工のこと、そして今回のプロジェクトにかける思いについてお話を伺った。

創業70周年 広松木工が大事にしていること

須賀:最初に、広松木工さんの会社のご紹介をお願いしてもよいですか?

藤野:広松木工は創業70周年、もともと卸しを中心に家具を作っていたメーカーなんです。最初は、卸の家具ですので既製品の生産受注をやっていましたが、今の社長に代になって、「広松らしいデザインとこだわりのものづくりを」と徐々に今の、広松木工の風合いをつくりあげてきた感じがあります。

このお店も、お客様に直接家具に触れてもらって試してほしいという想いから、10年ちょっと前ぐらいにオープンして、BtoBではなくてBtoCの小売販売をメインにさせていただいてる感じですね。基本的に広松木工の家具はオイル仕上げを中心にしていて、木の経年変化だったりとか、家族が使っていた中での傷、シミだったりも味わいに変えていける魅力だったりとか、どこか家具が家族の風景になればいいなという思いで制作販売させていただいています。

思いとしては、使ってもらう人の顔をしっかり分かったうえで販売したいなっていう。
家具って、ウチの家具は特にそうなんですけど、販売して終わりじゃなくて、そこからが長い付き合いの始まりだということを口酸っぱく社長は言っていて、私達もそこにやりがたいを感じているのです。

須賀:ショールームにお客様が来られて、どんな家具のご相談が多いですか?

藤野:やっぱり基本的には目的を持って来られます。大川は特にそうなんですけど、ダイニングならダイニングがほしいとか、リビングダイニングを空間をしっかりつくりあげたいというお客様が多くいらっしゃって。

一番気をつけているところは、「このお客さんがどういう暮らしをしたいか」という部分を一番重要視をしていて。どういった空間で過ごしていきたいとか、選んでいる床材はなんなのか。カーテンの色とか、そういったところを聞きながら、お客さんが好きなテイストとかをいろいろヒアリングしつつ、ウチの家具だったらじゃあこれだとか、ウチの家具じゃなくても何かしら他のメーカーさんだったりとかでも、そしたらこういうのはどうですか?というご提案をしていますね。

須賀:お客さんの暮らしの目線に立って、一緒に人生の風景をつくっていくような感覚でやられているんですね。

藤野:そうですね。

須賀:そうすると関わられたお客様とは、お付き合いがすごく長くなるんですか?

藤野:そうですね。長い方は長いですね。やっぱりメンテナンス方法とか、、リピーターの方とかとは、すごく仲良くなって。面白いのが、家族ぐるみで仲良くなっていたりするスタッフもいたりするので。独特だなと思いますね。
僕も仲良くなったお客さんとお昼一緒に行ったりとかしたりはしますね。やっぱり家にあがらせてもらうので。もし行った時とかですね。そこでコーディネートすることとかもあるので、そういうのはほかの会社とはちょっと違う関わり方なのかなとは思いますね。

夜明の宿プロジェクトと地域に対しての想い

須賀:このプロジェクトに対して、広松木工さんとしてはどういった期待をされていますか?

藤野:こういった宿との連携という取り組みは私たちも初めてなんです。もともとこのプロジェクトが始まった頃は、コロナとかの影響がない中で始まって、インバウンドがメインでお客様がいた時期だったんですけど、今期待するところは、やっぱり日本国内の人たちが大川とか柳川とか、このへんの筑後の地域に魅力を持っていただいて、このへんの地域全体が活性化することをすごく願っているんです。その中で、広松木工の家具を見に来てくれるのがひとつのきっかけになれば、それはそれですごく嬉しいことかなと思います。

須賀:藤野さんから見て、今の大川とか柳川、この地域の課題。どんなところが課題と思われていますか?

藤野:大川なんですけど、やっぱり「日本一の家具の町」ってよく言われるんですけど、だから大川に来ましたってお客さんが結構多いんですね。でも、蓋を開けてみるとどこに行っていいか分からないっていうのが結構多くて。

それはなんでかといったら、うちもそうだったようにBtoBで既製品の家具をつくっている会社も多いんですよね。だから下請け構造になっているのがあって。
そうなってくると、お客さんは1回は来たけど次は来ないというようなこととかもよくあるんですよね。独自のファンを増やしていかないと、持続性が無いというのは感じているところです。

須賀:これまでは経済成長の中で、家具を、ものを買っていただくという、それを生産地として大川はやってきたけれども、先ほどおっしゃられたような人と人との繋がりとか、そういったところが地域にとって大事ということですよね。

藤野:今、市役所のほうが結構いろいろ頑張ってあって、今回も「大川木工まつり」がネットでおこなわれたりとか。というようにシフトしていたりしますし。もうちょっと職人とのワークショップだったりとかを含めながら、観光的要素を強めていけたらいいのかなとは思いますね。

須賀:独自のファンをつかんでいくために、広松木工さんが大切にされてきたことはありますか?

藤野:そうですね。広松木工は、「味」を大切にしてきたんです。家具とかってよく北欧風とか言われたりするんですけど、何かしら「広松風」というようなワードができれば、すごくいいかなとおもっているんです。みただけで、広松ってわかるような「味」が大切。大川は箪笥で有名になった町なんですけど、テーブルからベッドからソファから。あとは照明とかバッグとか。私達は、暮らしの風景を細部までつくりたいという想いでやっているので、空間をトータルでご提案できたらなというのはありますね。

須賀:まさにライフスタイルですよね。(ライフスタイル)全体をってことですね。

藤野:そうですね。

新たな取り組みについて

須賀:今、広松さんがこの宿の取り組み以外にも何か挑戦していることとかってありますか?

藤野:プロジェクトでいえばウチの店舗ではあるんですけど、東京の日本橋高島屋のほうにSUNSHINE+CLOUDさんというところとウチがコラボレーションさせてもらって、「BARE FOOT(ベアフット)」という新しいラインを出しているんですけど、それのお店をオープンしたのが結構大きな挑戦だったかなと思います。

須賀:「BARE FOOT」のコンセプトについて、お聞かせいただけますか。

藤野:BARE FOOTは、「海辺のある暮らし」というのがコンセプトで。基本的にはウチのSANTA FE(サンタフェ)とかGALA(ガラ)のシリーズのように、木目を出して、“うづくり”というんですけど、うづくりの加工をコーティングしていて。
裸足でさわったりとか、素肌でさわるとすごく気持ちがいいように加工しているんですけど、そういった海辺のある暮らしが想像できるようなライフスタイルをご提案できたらなというので今回挑戦していますね。ソファなんかも2m30とか。2m60ぐらいか、一番大きいので。そういったソファもつくっていたりしていますね。

須賀:まさに、家具から発想していくというよりも、全体のをつくっていくというスタイル。在り方というか、そんな感じにされているんですね。

藤野:そうかもしれないですね。だから合うテイスト合わないテイストって非常に分かれると思うんですけど、でも 万人に受けるというよりかは、いろいろ絞っていくのがひとつ、ウチの魅力なのかもしれないですね。

須賀:これから大川とか柳川という地域、どんな風景になっていくといいなって思われていますか?

藤野:今まで柳川とかも海外からの旅行者がメインで産業が成り立っていたと思うんですけど、全国の人から「あそこ行ってみたいね」って思われる地域になったりとかが一番いいのかなと個人的には思います。大川にしてみれば、いろいろなメーカーさん同士がもうちょっと手を取り合ったりして、地域全体を発展させるようなまちづくりができればいいなと思いますけどね。

須賀:最後に「夜明の宿」この宿に来られるお客様に広松さんとして一言メッセージいただけたらなと思います。

藤野:今回は、素材となったのが昭和住宅ですが、それを壊しすぎず、デザインしすぎず、「暮らし」というものが感じられるリノベーションの‘家’になっていると思います、そこに、広松木工の家具をいれさせてもらえたことで、より心地よい暮らしとは何かを考えて頂くきっかけをつくれたらうれしく思います。

その中で広松木工の家具は、触れて頂いて分かるところがあるので、ぜひ使っていただいて、無垢の木の良さだったりとか木の匂いだったりとかを体感していただけたらなと思っています。もし、素敵だなと思っていただけたら、ショールームが近くなのでお越しいただいて、他の商品を見て頂いたり、スタッフの話を少し聞いてもらえたら嬉しいなと思います。

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